靴底感覚

――竹内幸哉の研究日誌――

小説なんて読んで何の役に立つの? 小説はキミの人生を擬似複数化するんだよ。 【過去ログ整理】2018.12.04

昨日、今日は予備校での2学期最終講義。いま学んでいる教材が、学問・社会・人生とどうつながるかを考えることが予備校でのキャリア教育になるのかな……などと今まで考えてもみなかったことをつらつらと考える。

昨日扱ったのは黒井千次の小説。70歳の男性が、処分するつもりで開けた昔の思い出の詰まったトランクから若い女性のポートレート写真を見つけ、妻の親友だった彼女との大学時代の事故のようなキスを思い出し……という話。

学んだ予備校生たちにとっては遠い存在。でも、過去を追想する熟年期の人生の豊かさに思いを巡らせる新鮮な機会になったのかもしれない。予備校でもキャリア教育ができる、という新発見。

*小説を読んで、登場人物の人生を擬似的に生きることができれば、それは一度しかない人生を擬似複数化できることである。単線的な人生を小説は無限に複線化できる。

@yukylab 午後1:12 · 2018年12月4日