靴底感覚

――竹内幸哉の研究日誌――

2022-01-01から1年間の記事一覧

教育評価・ルールメイキング・公正世界信念 【過去ログ整理】 2021.07.08

先週「教育評価とルーブリックの可能性を考える」と題してオンラインカフェをしたのだが、話題の中心は多面的評価をどう教科に組み込むかという高校の指導現場の話。従来からの取り組みとの整合性を保ちつつ、しかも組織としても個人としても負担を最小限に…

「ルーブリック3.0」/ピアノ教育とキャリアパス【過去ログ整理】 2021.05.27,06.15

■「ルーブリック2.0」と「ルーブリック3.0」 教師が生徒学生を評価する道具として認知されたルーブリックが「ルーブリック1.0」なら、生徒学生もまた教員とともにルーブリックを作り評価する共同主観性の一翼を担うのが「ルーブリック2.0」。そして、学校教…

読解経験の創造性 【過去ログ整理】 2021.05.16

そうか! 読解とは経験だということ。読解とは客観的なテクストの受動的再生ではなく、読解経験なのだ。それゆえ、経験を言語化する必要がある。言葉で「語る」必要がある。そして通常の客観テストで行われる読解の評価も、本来は読解経験の言語化の一つとし…

「分かり合えない」ことから/ソシュールのインパクト/性スペクトラムと言語 【過去ログ整理】 2021.04.27,28

■「分かり合えない」という初期設定「分かり合える」ではなく、「分かり合えない」という前提からスタートすること。分かり合えることはひとつの奇跡である。それはマルクスの言う「命がけの飛躍」だから。@yukylab 午後2:26 · 2021年4月27日 ■ソシュールの…

物象化・コンピテンシー・対人関係ゲーム 【過去ログ整理】2021.04.13,22

■個人に内在する能力という幻想 実験室の中で構成されたデータをエビデンスと称し、社会的に要請された「能力」という抽象的な概念を、さも実在するかのように物象化し、その過多を競うようなテストが独り歩きを始める。一部の人間科学は、そうやって権益を…

エロスとしての学問/学習履歴の常時観測/学問が「遊び」でなくなる日 【過去ログ整理】2021.04.04-07

■エロスとしての学問一部の人文系の大学教員がなぜ、3ポリやカリマネを軽蔑するのか考えてみたのだが、人文系は目的合理性を求めるような学問とは本質的に異質だからではないか。むしろ、そうした目的設定をした途端にウソになるようなもの、手段―目的連鎖に…

学歴社会から学習歴社会へ ―学びつつ教えることの常態化― 【過去ログ整理】2021.03.29

今日はELFでClubhouseを開きました。で、次のような結論に。学歴社会から学習歴社会へと移行する未来は、属人的な学びがふつうになる。と同時に学ぶ人/教える人を分ける意味が失われる。人はみな学びつつ教えることを常態化するようになる。それが経歴になる…

3つのポリシーは人文系の学問の本質を歪めるか? 【過去ログ整理】 2021.03.21

DPからCPを実装し、さらにはAPへという3ポリの「逆向き設計」は、基本的に目的志向、目的合理性の極みである。その意味で大学改革の核心は理系的な枠組みに貫かれている。そして直感的に言って、人文学はそうした目的合理性を疑うところにその凄みがあると思…

「ジェネリックスキル」養成の副作用 ――自己責任論を強化するおそれ 【過去ログ整理】2021.02.13

自戒を込めて言うと「〇〇力を高めましょう」というジェネリックスキルやコンピテンシー・ベースの発想は注意が必要で、個人が能力を高めることに主眼が置かれ、せっかくの探究が社会的な方向に向かわず、新自由主義的な自己責任論に帰着する懸念がある。今…

対面とオンラインのハイブリット型授業で留意すること 【過去ログ整理】2021.02.04

ハイフレックス型orハイブリッド型と言われる対面・オンライン混在型授業は、オンライン参加者の多くに疎外感を与えるようだ。こういうときは、グループも対面・オンライン参加者が混在するようメンバーを設定すること、そして対面参加者とオンライン参加者…

「文化的見当識」を高める知識の獲得 【過去ログ整理】2020.12.27

詰め込み教育だとか知識注入型だとか言われインプット中心の学びは蔑まれて久しい。何のために覚えるのか、大人になって忘れるじゃないか、ネットで調べればいいからスマホ時代には即していない、と。同意できる面があるし、アクティブラーニングを推進する…

チーム作りの秘訣は「失敗経験」「場外乱闘」―はやぶさ2の津田さんの話― 【過去ログ整理】2020.12.12

はやぶさ2のプロジェクト・マネージャーの津田さんがNHKの「クローズアップ現代+」で話していたことは、チームビルディングにとってたいへん示唆的だと思った。キーワードは「失敗経験」「場外乱闘」。「失敗経験」は、失敗を経験した人をメンバーとして選…

「哲学する人間」という授業の到達目標 【過去ログ整理】2020.12.03

「人は哲学を学ぶことはできない。ただ哲学することを学びうるのみである」とはカントの言葉だが、今日はこの言葉について考えさせられた。今日の授業「哲学する人間」はヴィトゲンシュタイン前期思想と論理実証主義の違い、そしてヴィトゲンシュタイン後期…

コロナ禍を好機と捉える学生・嵐が通り過ぎるのを待つ学生 【過去ログ整理】2020.09.22/11.30

SNSへの警戒心の高さ 学生のレポートを読んでいてなるほどと思ったのは、SNSに対する恐怖心や警戒心が非常に強いということ。これはメディアリテラシーなど教育の賜であろうが、過度に警戒することは、コロナ禍での情報収集や発信の機会を逃し、経験から…

大学生に求めたい自己追求モード 【過去ログ整理】2020.08.22

大学受験とは、まずもって大学の側に、次に社会の側に自分を折り合わせていく人生のプロジェクト。進路選択、つまり進む学部や学科を選ぶということ自体が、一人一人違うはずの個人が大学や社会の側に取り込まれることを意味する。制度に適応するということ…

新しいコミュニケーション様式/オンライン授業はテレワークではない 【過去ログ整理】2020.08.10

オンラインという新しいコミュニケーション様式 ここのところ、教員のオンラインイベントに参加して、いつも考えさせられることは、対面的なリアルコミュニケーションをデフォルトとすべきなのかということ。声、顔、仮面、アバター、バーチャル背景……こうし…

近代的な学校と教員は役割を終えるのか? 【過去ログ整理】2020.07.23

withコロナの状況が長く続く中、場所としての学校の役割が大きな曲がり角に差し掛かっているということをずっと考えてきたのだけれど、いま考えているのは専門家として教員の役割も転換点に差し掛かっているということ。長期的な視点から見たとき、制度とし…

ジェネリックスキル批判 【過去ログ整理】2020.07.12

ジェネリックスキル的な教育を推進する側にいたわけだが、その負の側面についてよくよく考えてみるべきだとずっと思ってきた。時代の変化に対応できるようなハイスペックな社会人になるべく、自己のスキルを磨こう! というのがジェネリックスキル推進の陳腐…

浜松の高校生のふり返りシート 【過去ログ整理】2020.07.02

浜松の高校生のリフレクション力にはいつもたじたじである。ふり返りだけで20分ぐらい使って、B5判白紙にびっしりと書いてくる。中には裏までびっしり書いてまだ足りない生徒もいる。最初はふり返る内容について質問文を用意してリフレクションシートを印刷…

脱魔術化された大学/今必要な「教える―学ぶ」関係/オンライン授業一ヶ月 【過去ログ整理】2020.05.23-06.07

脱魔術化された大学飲食店がテイクアウトになって街や店の雰囲気や容器や家具・照明といった背景が脱魔術化されるのと同様に、大学がオンライン授業化して有形無形の文脈的側面(場所・校舎やキャンパスの雰囲気・ブランド…)が脱魔術化されるのかもしれない。…

オンライン授業を始めて分かってきたこと【過去ログ整理】2020.05.16

大学でのオンライン授業開始一週間。とかく対面授業での代替手段と捉えられがちだが、新しい可能性を感じたのでブレスト的に書いてみる。 ・学生との距離感がとても近い。彼らは基本顔は出さないが、何か発言を求めればチャットでどんどん返してくれる。タイ…

非常時のリーダーシップ 【過去ログ整理】2020.05.01

管理-抑圧的リーダーシップは他人を信じてない。自分が一番賢くて、自分の判断の正しさに1mmのゆらぎもない。一方、協調-共創的リーダーシップは、他人を信じて託すことができるし、自分の判断が誤りうることが分かっているので、メンバーの意見に耳を傾ける…

オンライン授業で大事にすべきこと、ふたつ。 【過去ログ整理】2020.04.16

自宅待機要請が続くなか、オンラインで学びの場をどう作るかが喫緊の課題でして、ただいま試行錯誤中です。録画による動画配信授業やzoomによる双方向授業を経験しましたが、そこで私はライブ感と教員の身体性を大事にしてきました。ライブ感というのは、普…

ポストコロナ禍で問われること 【過去ログ整理】2020.04.06-07

ポスト・コロナ禍のことを考えている。授業のICT化が一層進むとか、仕事のテレワーク化が一層進むとか、アクティブラーニングが衰退するとか、そうしたことも大切だが、いま考えているのはそうしたことではない。そもそも学校で集団が一斉に学ぶことの意義、…

コンピテンシーはいつ伸びる?/人文系とPDCA思考 【過去ログ整理】2019.10.28

対人コンピテンシーは大人になってから成長するのか?コンピテンシーは大学生になってから伸ばすのは難しいから、高校生までに、いやもっと早い段階から伸ばしてやるべきである、そんな論調が高まっていて、アクティブラーニングやジェネリックスキルの普及を…

教員の情熱を奪いかねない協働作業 【過去ログ整理】2019.10.15

教員組織が協働でカリキュラムや教材や授業を作っていくことはとても意義深い。一方で、その組織が上意下達の硬直した構造になってしまうと、現場は主体的に関われなくなる。やらされ感満載でペーパーワークに苦労するだけで消耗することになる。ボトムアッ…

主観-客観図式を強化する入試現代文。アンラーンする可能性を秘めたTAE。 【過去ログ整理】2019.09.06

主客図式、つまり主観(読み手の意見・考え)と客観(書き手の主張・テクストに書かれていること)は誰にとっても截然と切り離せるものである、という前提とした思考から逃れられないと、TAEのフェルトセンスとか、身体での前言語的な感覚から生じた「パターン」…

〇〇「を」教えること/〇〇「で」教えること 【過去ログ整理】2019.08.17

今の時代感覚から見て、数学の教員が数学「を」教えることしかしなかったら、ちょっと遅れているよと言いたくなる。数学「で」世界の真理に迫ることの意味やら、人間的実存が数学的世界分節を通じて生きていくことの意味やらを考えるような授業をしてほしい…

高いジェネリックスキルをもっている半グレ 【過去ログ整理】2019.08.14

NHKスペシャル『半グレ』を見てから、ずっと考えているのは、理念なしのジェネリックスキル養成は、ときにおぞましい帰結となるということ。京都の高偏差値、有名大学の学生が、半グレ組織の末端として犯罪に手を染めていた事実は衝撃的。 ここには専門分化…

言語の世界創造性 【過去ログ整理】2019.06.26

言語を伝達手段としてのみ考える場合が多いけど、言語には世界を創る側面があり、そっちの方がはるかに重要だと思う。いわゆる伝達の手段としての言語と区別して「世界制作語」「世界構築語」あるいは「自分世界語」というネーミングをしたらどうかと思って…